オンウェハーでの微小電流測定

次世代デバイスに対する強い要求を受けて、半導体の高集積化・微細化の傾向は衰えを見せない。半導体プロセス構築、そしてプロセスモニターおいても、微小電流を高速・高精度に測定することが益々重要になってきている。今回は高精度な微小電流を行うために、オンウェハー試験での注意点を紹介する。

2008年7月

 

オンウェハーでの微小電流測定を妨げる原因
現実のテスト環境には、微小電流測定に悪影響を及ぼす要因が、数多く存在する。ここでは微小電流測定に影響を及ぼす要因を具体的に示す。 絶縁材料(=テフロン・セラミック等) 微小電流測定を行う場合、コネクターやケーブルの外皮、プリント基板、プローブカード等の測定器/プローバーとのインターフェースに使われる絶縁材料には高抵抗の絶縁体を使用しなければならない。絶縁度が低い場合、そこから漏れ電流が流れてしまうことになる。 測定器/プローバーインターフェースにおける漏れ電流(=空気中のNa等) 絶縁材料の抵抗は、水分やイオン性の化学成分等がひきおこす、電気化学効果により低下する。プリント基板やプローブカード等がイオン的に汚染されていると、導電性のパスが形成され絶縁抵抗が低くなる。また、イオン性化学物質により局所的な電池が形成され、オフセット電流が流れてしまうこともある。この効果は、微小電流測定を行なう際に大きな問題になっている。

 

 

湿度(=室内・シールドボックス内)
テスト環境の湿度を低くしかも一定に保つことが重要だ。湿度が高い場合、上述の電気化学効果が起きやすくなり測定に影響を及ぼすことになる。 温度(=室内・シールドボックス内) テスト環境の温度を一定に保つことも微小電流測定結果の一貫性を保つ上で重要だ。これは測定電流が温度変化の影響を受けやすいためで、温度変化により空気中の水蒸気の凝結がおきた場合、いちじるしい漏れ電流が発生し、微小電流の測定は極めて困難になる。

 

(=シールドボックス内)
半導体デバイスの表面では、光により電子・正孔対が発生する。これは余剰電流となり微小電流測定に影響を与える。光により発生したノイズ電流は不安定で、収束もゆっくりとしている。

ケーブル・ノイズ(=伝送用の線材、同軸又はトライキシャル)
ケーブルにより発生するノイズは微小電流測定に影響を与える。ケーブルがひきおこすノイズには摩擦電気と圧電効果によるものの2種類があり、摩擦電気はケーブルが振動等で動いた場合に、ケーブル内の導電体と絶縁体の界面の摩擦により発生する。圧電効果によるノイズは機械的な圧力が絶縁体に加えられることで発生する。

外来電気ノイズ(駆動用モーター、照明等)
微小電流測定に影響を与える主要な外来電気ノイズとしてはAC電源ラインからのノイズが挙げられる。一般的に全自動ウハープローバは大電力を必要としノイズを発生させ、またプローバチャック部分も面積が大きく外来ノイズを拾ってしまうことがある。

 

誘電吸収(=絶縁材に電子が溜まっている状態)
絶縁材料(プローブカード等のプリント基板、ケーブル/コネクターの絶縁材料等)に電界が印加されると誘電吸収が現れる。印加電圧が変わると、誘電吸収による漏れ電流が比較的長い間流れる。誘電吸収による電流の量は、絶縁材料と印加電圧の大きさによって決まり、時間と共に減少する。一般に、誘電吸収による電流の補正を行うことは困難だ。電圧印加後、電流を測定する前に適切な待ち時間を取らないと、測定したい電流ではなく誘電吸収による電流を測ってしまうことになる。誘電吸収は微小電流測定を迅速に行う際に大きい障害となっている。 容量性カップリング(=摩擦によるもの) 容量性カップリングはノイズ電流の原因のひとつだ。容量カップリングにより発生する電流には、印加電圧の変化によるものと、振動によるものとがある。例えば、電圧が印加されている状態で振動により容量が変化した場合に、ノイズ電流が発生する。さらに容量が誘電吸収を持つ場合には誘電吸収によるノイズも発生し、たとえ、絶縁材料が導電体に接触してない場合でも、カップリング容量を通して誘電吸収による電流が流れてしまう。

 

オフセット
理想的な測定器ではDUTインタフェースに何も接続されてなく、しかも電圧も印加されてない状態では全く電流が流れないはずだ。しかし、実際の測定器では、ごく微量なオフセット電流が流れている。測定器本体によるオフセット電流は、測定値を本来の電流値からシフトさせる。

チャック-グランド間の漏れ電流
チャックからグランドへの漏れ電流が流れる原因として、主に3つの原因が挙げられる。
1)チャックとZステージ間の絶縁材料およびチャックの真空孔とその  導管の汚れ
2)テスタとチャックの間の不十分なガードの接続
3)Zステージモータのノイズ
これらの問題は最新のプローバではほとんど解決されている。

 

微小電流測定を行う際に更に考慮すべき事項
fAレベルの微小電流測定を実際に行う場合、テスタ以外にもさまざまな要因を考慮する必要がある。これらの要因を満たさないと実際にfAレベルの微小電流測定を実現することはできない。
●被測定物に光があたらないようにしなければならない。光シールドをプローバに施す必要がある。
●テスト環境の温度と湿度は一定に保つ必要がある。
●微小電流の測定ではプローバ・インタフェースを常にきれいに保つことが不可欠だ。プローブカードを替える際は、体からの油や汗の付着を避けるために、きれいな手袋をつけておこなうこと。また息等がかからないようにマスクをする必要もある。仮にプローバーインフェースやプローブカードが油やホコリ等で汚れてしまった場合、木綿等のホコリの出にくい布と、プロパノール等で完全に拭き取る。

 

●テスト環境での振動を減らすことも重要だ。できるだけ振動がおきないようにテスト環境を構築することだ。又、測定中は歩き回らないよう気をつける。

今回は、より高精度に微小電流測定を行うための注意点を挙げてみが、まだまだ挙げる注意点はある筈だ。更にまとめ次回発表する。

 


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