アルプスの少女ハイジのなぞ!

あまりに面白い話でしたので、ちょっと載せてみました(太)

アルプスの少女ハイジのブランコを覚えているか、と友人に尋ねられた。
オープニングの歌に合わせて、ハイジが異様に長いブランコをこいでいたというの
だ。言われてみれば、そんな気も・・・。

そこで筆者はビデオ屋に走った。確かに長いブランコだ。画面で測定したところ、
前方の空中で一瞬停止してから後方で止まるまで、6秒もかかっている。通常の振
り子運動では、ロープの重さを無視して計算するが、それに当てはめると、長さは
36m。これは長い! 身長40mのウルトラマンに迫らんとする勢いだ。
だがこの場合、ロープの重さを無視していいのだろうか?

そこで今度は東急ハンズに走った。買ってきたのは、直径16mmの麻ロープ。ブラン
コとしては手頃な太さだ。1mの重さは170g。片方36mなら、結び目を入れても13kg
だ。これに対して、10歳の日本人女子の平均体重は37kg。やや太め
のヨーロッパ人であることを考えて、ハイジの体重は40kg前後と見られる。13kgの
ロープの端に40kgのオモリをつけた振り子の周期は14秒。画面上の周期12秒に合わ
せて計算すると、ハイジのブランコの長さは27mとなる。
それでもブランコとしては異例の長さであり、落差も大きい。最も低い地点では相
当のスピードが出るはずだ。画面を静止させて測ってみたら、最も高く上がった地
点で垂直方向からの角度は70度もあった。こぎ過ぎである。落差18m。最高速度
は、6階の窓から飛び降りたのと同じ、時速68kmに達する。

これはコワイ! 

ディズニーランドのジェットコースター・スペースマウンテンで
さえ最高時速50kmだ。しかもシートベルトもなんにもなく、頼りになるのはシリの
下の狭い横板と両腕だけ。シャトルループなどでもそうだが、特に後ろ向きに振ら
れるときは、心臓が点になるほどオソロしいはずだ。

さらによく見ると、足もとのはるか下界を教会の尖塔が行ったり来たりしている。
どうやら100mぐらい上空で遊んでいるようなのだ。歌の中で「口笛はなぜー遠くま
で聞こえるの」などという素朴な疑問を漏らしているが、そりゃアンタがそんなに
高いところにいるからだ! 音は全方位ドーム状に広がっていく。ヒバリやトンビ
の声がよく聞こえるように、障害物のない上空では、地上より音が伝わりやすいの
である。

上空100mにおける時速68kmの振り子運動。常人ならとても耐えられないが、ハイジ
は天真爛漫に笑っている。恐るべき精神力だが、それより気になるのは、いったい
どうやってこんなブランコに乗ったのかということだ。

歌に「教えてー、アルムのモミの木よ」という一節がある。ハイジの生活圏内に、
有名な大木があるらしい。ブランコの設置場所として考えられるのはここだけだ。
現在、世界最大とされているカリフォルニアのセコイアスギでさえ高さは110m。ハ
イジのブランコの木は地上127mに横枝を張っているのだから、楽勝で世界一だ。
ブランコに乗りたくなると、ハイジはこの世界遺産級の巨木にアタックをかける。
127mの垂直登攀を達成し、間をおかずロープ伝いに27m降りる。続いて全身を躍動
させ、ジェットコースターなみのスピードを満喫するのだ。遊びあきたら、むろん
同じルートをたどって降りてこなければならない。往復308mの垂直昇降。
10歳前後の小ムスメが、いつここまで体を鍛えたのだろうか?

教えて、おじいさん!